第161話 大山さんと名前呼び
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彼と別れてから、玄関のドアに背中を預けて、一息つく。 すぐに簪を外し、髪も下ろした。 父親にこの姿見られるのが恥ずかしいし、何より見せる相手は彼だけにしたかった。 スマホを開き、彼にお礼のメッセージを送る。 …これでよし。 早速、着替えるために自室に向かう。 大山さん「女バスのみんなにも報告しなきゃ…。部長にもお礼をしないと」 急な依頼に快く対応してくれた部長には感謝しかない。 大山『無事、デートを終えることができました。部長、着付けしていただき、ありがとうございました。みんなも心配してくれてありがとう』 送信。 思いの外、女バス部の反応は早く、すぐに既読がついた。 中村『おつかれー。楽しかった?』 部長『気にするな。私も久々に腕を振るえて楽しかったぞ』 先輩『で、どこまでいったの?早く詳しく迅速に教えて!!』 後輩『ちゅー?それとも…それ以上?』 白木『私の先輩にいかがわしいことをしたら、小谷のこと絶対に許しませんからね!!』 〈白木をブロックしました〉 中村『具体的なことはまた後日、まず私に直接話をしてよね。親友の特権なんだから』 大山『うん。今日は本当にありがとう。また学校でね』 メッセージアプリをスリープ状態にし、スマホを机に置く。 シワになるといけないので、浴衣は綺麗に畳んだ。 大山さん「はしたないけど…今日くらいはいいよね?」 誰に言い訳をするわけでもなく呟き、下着姿のままベッドに倒れ込む。 大山さん「今日は楽しかった…」 彼との勉強会、夏祭り、そして…。 大山さん「―――!!」/// ついに彼を名前で呼んでしまった。 そして、名前で呼ばれてしまった。 それだけで彼との関係が深まった気がするし、身悶えるほどに嬉しい。 思い出すたびに、クマのぬいぐるみを抱き締め、両足をバタバタさせる。 胸の奥からこみ上げてくる嬉しさを発散するにはそれしか無かった。 大山さん「皆の前では小谷くんって呼ばないとね。気をつけないと」 彼との関係性が本当に恋人同士に進んだ暁には、名前呼びもやぶさかではない。 しかし、今はまだ未確定な状態。 お互いに嫌な思いをしないようにしなければ。 だけど、今だけはひとりきり。 大山さん「コテツくん♪コテツくん♪」 嗚呼、なんて甘美な響きだろう。 無意味と分かっていても、その名前を口に出すことをやめられなかった。
背景の扉の取っ手をおしゃれにして。女性の顔に沿って表示された漫画的感情表現を削除して。
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