案内
廊下の方から足音が近付いて来た。二人はそちらに注目する。 歩いて来たのは、長い黒髪の少女。海松色の衣服を身に着け、腰にはやはり刀を据えている。横髪の飾り紐と赤色の瞳が印象的で、とても優しい顔立ちである。 少女は座敷の前で立ち止まると、こちらを向いて跪いた。体に力が入り、何やら緊張した様子に見える。 黒髪の少女 「失礼します・・・!」 細い声。彼女はその体勢で少し静止した後に、恐る恐る顔を上げてこちらの様子を窺い始めた。 先の門番とは随分違った対応に、燕は少しだけ戸惑う。都は少女と目が合うと、表情のない顔のまま小首を傾げた。 弥 「わたしは、折笠 弥といいます。信楽様のお部屋にご案内します。こちらへどうぞ」 弥は立ち上がって一歩後退し、左手を広げてそっと横に伸ばす。 燕 「はい」 都 「宜しくお願い申し上げます」 弥は客人の畏まった様子を見てか、目をぱっちりと開けて慌てたような仕草をした。 弥 「あ・・・!わたしはただの案内役ですから、どうか畏まらないで下さい・・・!」 燕 「えっ?ええ・・・」 弥がゆっくりと廊下を歩き始めた。都は足を止めたままこちらを見て、一度だけ首を縦に振った。燕から後に続く。 弥 「女性のお客さんは、あまりいらっしゃらないんです」 燕 「そうなの?」 弥 「はい。だから何だか嬉しくて」 案内役の弥は、時折振り返りながら親しげに話し掛けてくる。都はそれに耳を傾けつつも、視線をゆっくりと隅々まで巡らせながら歩いていた。 弥 「お客さんは、どちらからいらしたんですか?」 燕 「私たちは、天津からよ」 弥 「天津から・・・!」 彼女はまだ天津での事件を知らされていないようだ。燕は気を遣わせないように、経緯は伏せて答えた。ここから執拗に掘り下げてくるとは考えにくいだろう。 弥 「お二人とは歳も近そうですから、わたし・・・仲良くなれそうです」 嬉しそうに微笑む姿から、純粋な人柄が滲み出ている。 これからの事は、まだ分からない。燕はその言葉に対して、はっきりと肯定する事はできず、かといって否定もできず、無言で微笑み返すに留まった。 ーーー ◎折笠 弥(おりかさ あまね)の前回の作品 https://pixai.art/artwork/2033389339736171731?utm_source=copy_web
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