SLAYER
神話は滅びなかった。受け継がれた。 国家は兵器ではなく、伝説を継承した。 国の未来は、一人の継承者の刃に託される。 遠い昔、人間の傍らには、人ならざる者たちが確かに存在していた。鬼、吸血鬼、狼男、龍、巨人、魔女――人々は彼らを畏れ、敬い、やがて神話や伝説として語り継いだ。しかし、それは作り話ではなかった。彼らは人類の歴史の裏側で密かに生き続け、姿を消しただけだったのである。 時は流れ、科学が神話へと追いつく時代が訪れる。遺伝子工学、再生医療、バイオテクノロジーの飛躍的な発展により、人類はついに伝説の存在が残した遺伝情報の解析に成功した。各国は極秘裏に、自国に伝わる伝説の力を人間へ受け継がせる研究を開始する。そして誕生したのが、人間と伝説の存在を融合させた「継承者」であった。 鬼の力を宿す者。吸血鬼の血を継ぐ者。狼男の牙を受け継ぐ者。龍の力を宿す者――。彼らは兵士ではない。国家の未来を背負う、たった一人の戦士である。 やがて資源の枯渇と世界情勢の悪化により、人類は全面戦争を続けることができなくなった。一度世界大戦が始まれば、人類そのものが滅びる。そう結論づけた各国は、新たな国際協定を締結する。国家間の領土問題、資源採掘権、技術供与、あらゆる重大な国際紛争は、それぞれの国を代表する継承者同士の決闘によって決着をつける。世界の秩序は、武器ではなく、一人の継承者によって守られる時代となった。 四年に一度、世界各地を舞台に、国家代表による決闘大会が開催される。それは祭典であり、外交であり、そして世界最大の代理戦争でもあった。 今回の舞台はヨーロッパ。荘厳な大聖堂、古城、石畳の街並みが残るゴシック都市。そこへ、日本代表として一人の少女が降り立つ。彼女の身に宿るのは、日本最古にして最強の伝説――「鬼」。人間の肉体に鬼の因子を宿し、その力を最大限に引き出すための最新鋭強化装甲を身に纏った、唯一無二の継承者。 世界は彼女をこう呼ぶ。 ――SLAYER 国家の未来をその刃に託された、最強の執行者。今、神話を受け継ぐ者たちによる、世界の覇権を懸けた戦いの幕が上がる。