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結局、夕方まで私たちは海で遊んだ。 海水浴客はほとんどいなくなり、海の家も片づけを始めていた。 閑散として波の音が響く砂浜に、私は従姉(あね)と座っていた。 日焼けで火照った腕と、それを撫でる潮風を感じながら、私は従姉の横顔を見ていた。 いつもマイペースな従姉らしからぬ、どこか遠い目をしていた。 その視線の先には一体何があるのか、その時の私にはわからなかった。 それは海でも、空でも、まして私のことではないのはすぐにわかった。 薄暮に映える従姉の顔を、私は生まれて初めて美しいと感じた。 そして同時に、いつもの彼女とは違う雰囲気に、私は少し怖さも感じた。 「ねえ、沈む夕日にバカヤローと叫ぶっていうじゃん?」 従姉が急に口を開いた。 「そうなの? それって、いつの時代の話だよ」 「いや、そうなんだけどさ。でも何となく私、その気持ちがわかったかもしれない……。って、これじゃ夕日が見えないよー」 私たちの目の前に広がるのは、東向きの太平洋だった。夕日を見るには海の向こう、アメリカまで行かないといけなかった。 「ムムム……。たまには太陽も西から登って東に沈んでくれないかなー」 「それじゃバカボンだよ」 地元ローカル局の再放送を、小さい頃二人で一緒に観ていた、古いアニメだった。 私のツッコミに、従姉が吹き出し、ツボにはまったのか大笑いしだした。 「私、あの歌のせいで東西逆に覚えてたよー」 表情がいつもの飄々とした彼女に戻り、私は安心した。 あの頃の私は、従姉の一面しか知らなかったし、その一面が全てであると信じて疑わない少年だった。