【.εpb ♯84】渦巻く思惑「Oh more Coup」!
「………で、どーなの?」 「【化け物】だのぉ。 あ奴を"排除"する、という選択肢は難しくなったのぉ…。」 珍しく神妙な面持ちで、 しかし内なる歓喜を隠しもせず男は言い放った。 この男が【化け物】と評し、事の成否を【難しい】と言うのなら、…事実そうなのであろう。 それは最も短絡的かつ、確実な手段の消失を意味していた。 今にしてみれば、ルイーダが提示してきた"白地手形"の報酬も決して法外ではなかったように思える。 (勘繰っちゃいたけどさぁ… 予想を上回る特大不良物件まわしやがって‼︎ マジで焼くぞ、クソ女…… ) 悪態をつきつつも、すぐさま自らの憤慨を諫め自制する。 激情にまかせてあの女を◯◯◯◯たところで、 何の得にもなりはしない。 想定していた選択肢の一つが使えなくなった。 …ただ、それだけのことだ。 彼女は目の前の男もまた戦闘における【化け物】であることを知っている。 この男が一度戦闘に入ってさえしまえば、 それで今回の"事は成る"。 あの女僧侶の戦闘力を仮に【人類史上最高峰の勇者】を遥かに飛び越えて【魔王】クラスと過剰想定してみたところで…結果は変わらない。 ルーラで勇者を連れ出す程度の隙は余裕で作り出せるだろう。 …あとはタイミングの問題だ。 先の邂逅で勇者のパーティに加わり損ねた直後、 電撃的に戦闘が始まっても、実は何も問題は無かった。 その状況も当然想定内だったからだ。 あの場で、この狂犬を止めた理由はたった一つ… あまりに弱く、憔悴しきった勇者のそばに、 常にあの女僧侶が張り付いていたからだ。 戦闘に巻き込まれた勇者が "消し飛んじゃいました♪"…では、 誰も幸せになれない。 そう判断したからこそゲマルの暴走を制しもしたし、"それで止まった"ということはこの男自身、適切なタイミングでは無かったと判断した結果だ。 仕掛ける"機"だけが、事の成否を決める。 予め用意していた戦術を全て白紙に戻し、 実際見た2人の戦力、性格、他全ての情報を加味した上で改めて丁寧に戦術を練り直す。 明朝、勇者のパーティに加入さえできれば、 もっとも楽な形で依頼は達成できる。 何も問題は無いはずだ… しかし… 一抹の不安が心によぎった。 …彼女はそれを"気の迷い"と片付けずに、 自らの知識と経験の集大成としての【直感】として受け入れた。 より確実性を増す為に、長期的な同行すらも視野に入れた計画をも練り上げる。 …全ては、自らの【 目的 】の為に… ついには意図的に無視していた自らの思考を乱す不協和音に耐えきれず、その元凶を問い詰めた。 「…あのさ、 何でそんなバカみたいなファッションになってんの?」 「昂った我が【戦気(オーラ)】に触れて弾け飛んでしまったのだッ!! だが見ろッこの【newカスタム布の服】をッッ!! 満身創痍でありながら我が"息子戦士"おろか上半身まで健気に守り通しておるわッッ!! 実に見上げた忠誠心よッッ!!!!」 「……こんどまた街中で薄汚いモン披露したら、 燃すよ?」 (ゲマルどのー!バジェニどのー!… はやく行かねば席がうまってしまいますぞー!…)

