『黄金回廊の無言の合図』
ドングリ


カジノ最奥にある、限られた者だけが座ることを許された最後のテーブル。 ヨルはシャンパングラスを片手に、対戦相手の前へ静かに立つ。彼女の表情に焦りはなく、積み上げられたチップの向こうに潜む標的の意図を、紅い瞳で冷静に見極めていた。 アルトリアはその隣で、ロイヤルバニーのホステスとして銀のトレイを掲げる。給仕を続けながらも、その緑の瞳は部屋の出口、護衛の配置、そして標的の指先を捉えている。二人は互いを見る必要すらない。同じ目的を共有していることを、すでに理解しているからだ。 黒き茨が勝負を動かし、白き王冠が逃げ道を封じる。 剣も刃も必要ない。最後の一枚がテーブルへ置かれた時、標的はようやく気づく――この勝負は、最初から二人の掌の上にあったのだと。