レコードショップの彩虹の少女
翠音


連日の炎天下で外出もままならず、暇を持て余した私と従姉(あね)。 その日、私たちは祖母の暮らす母屋北側にある「開かずの間」に足を踏み入れた。 とはいえ実際はそんな大層なものではない。 納戸を改造した四畳半間、数年前に死んだ祖父が書斎代わりに使っていただけの小部屋だった。 祖父の趣味だったクラシックのレコード棚や、ステレオなどのオーディオ機器が所狭しと並んでいた。 「昔はCDの代わりに、この黒いレコードを回してたんでしょ?」 横にいた従姉に聞かれたものの、生返事しかできなかった。当時の私は音楽に興味が薄く、知識もほとんどなかった。 従姉は面白がって棚からLP盤を次々手にとっては、ジャケットを眺めていた。 祖母によると、体調を崩していた最晩年には音楽を聴くこともなくなり、この部屋にもほとんど立ち入らなくなったという。 「仲の良かった老舗のレコード屋が町にあったんだけど、そこの店主が高齢で店を畳んでねぇ。レコードの針も手に入りづらいってぼやいていたけど」 祖母は狭い部屋を一瞥しつつ言った。 そして祖母自身が高齢なのもあり、この部屋の物を処分したがっていた。しかし祖父の大事なコレクションだったこともあり、手をこまねいていたようだった。 私は何の気なしに、小さな小物棚の引き出しを開けた。 几帳面だった祖父が残した何かのメモや、どこかの鍵に混じって、小さなプラスチックのケースが一つ入っていた。 【#2へつづく】