Halloween Bride (Yuki Saiko) 02

『黒い薔薇と幸福の花嫁』 古い洋館のホテルには、ハロウィンの夜にだけ開かれる「秘密の婚礼舞踏会」の噂があった。 招待状を受け取るのは、人生の大切な節目を迎えた者だけ。そして、その舞踏会で花嫁が身にまとう衣装は、代々受け継がれてきた特別な一着だという。 純白のパンツスーツは、気品あるシャープなラペルと美しい仕立てが特徴。そこに取り外し可能なロングオーバースカートを重ねることで、凛とした装いから優雅なウェディングスタイルへと姿を変える。黒いクリスタルの装飾は夜の輝きを、小さな銀のコウモリのブローチは幸運を運ぶ使者を意味していた。 そして花嫁が手にするのは、深紅と黒の薔薇を束ねた秋色のブーケ。赤は情熱、黒は永遠、白は新しい人生。その三つがそろったとき、真の祝福が訪れると伝えられている。 昔、この洋館には風変わりな仕立て職人が暮らしていた。彼は最愛の妻を病で失い、二度と結婚式を見られないことを悲しんでいた。そこで、いつか誰かの幸せを見届けられるようにと、昼にも夜にも似合う花嫁衣装を仕立てたのだった。 しかし、完成した衣装を披露する前に、彼もまたこの世を去ってしまう。 それから何十年もの時が流れたハロウィンの夜。ある若い女性が、その洋館で結婚式を挙げることになった。彼女は亡き祖母から受け継いだ銀のコウモリのブローチを胸元に留め、純白のスーツに袖を通した。 式の途中、誰もいないはずの階段から、古いオルゴールの音色が聞こえてきたという。 音楽に導かれるように花嫁が微笑むと、窓辺に一匹の小さなコウモリが舞い降りた。 その瞬間、館を包んでいた蝋燭の炎が一斉に輝き、深紅の薔薇がまるで祝福するように香り立った。 以来、この衣装を着て結婚した二人は、どんな困難に遭っても互いを思いやり、幸せな家庭を築くといわれている。 「本当の幸せとは、永遠に変わらないことではない。何度でも、新しい一歩を一緒に踏み出せること」 ハロウィンの夜、銀のコウモリが花嫁の肩をかすめたなら、それは遠い昔の仕立て職人から届いた、幸せへの祝福なのかもしれない。

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