肉食系
紳士
2


最近、あいつは常にマスクをするようになった。"常に"と言っても、以前までと違っていつも一緒にいたわけじゃない。 講義も全く同じものをとっているわけではないし、お互い別のサークルに所属している。 朝並んで登校することはなくなったが、キャンパスで会えば話はする。マスクのことだって、サークルで喉をよく使うからだと聞いていた。 それでもなんだか不安で、マスクを取ってくれるよう頼んだ。思えば、なぜあんなに心が騒ついたのだろうか。ただ薄い布が一枚かけられただけなのに。 朝はここで合流して、夕方はここで別れる、いつもの交差点だった。 どうしてもと言うならと、 あいつはマスクを下げた。 夕陽に照らされたそれを、見るべきだったのか。何も見ず、何も知らないべきだったのか。その答えは、もうわからない。今の自分にわかるのは…あの朝は、二度と戻ってこないだろうということだけである。