【.εpb 過去ばなし】/【言霊喰魔(Word Eater)ジェニファー・バートリー】
彼女は没落した旧貴族の一粒種として生を受けた。 幼児用の玩具にはまるで興味を示さず、親の目を盗み父親の書室にハイハイで入り浸ってはひたすら専門書と戯れ、生後3ヶ月で母国語を話しはじめた"言葉"の麒麟児である。 6歳の時に両親を失ってからは、 その遺産で貴重な専門書、魔導書を買い漁り読み耽るだけの隠遁生活へ突入する。 9歳の頃に遺産を全て使い潰すと、屋敷と家財を売り払って一人旅に出る。 世界各地の王立、国立図書館を巡り、 朝な夕なと通い詰め、館内全ての書物を貪るように読み尽くすと、また次の地へと流れていった。 その【知識の補食】の一環として【呪文】の修得があった。 魔導書を読み解く事で呪文の基礎構造は十全に理解できた。 あとは他者が実際に使用する様を見る事ができれば、たいていの呪文は容易にトレースすることが可能だった。 そして呪文修得により、彼女の【世界各国図書館巡り 知識蒐集の旅】は劇的に効率化した。 やがて数年の時を経て、世界に既存する大半の書物を読み尽くしたのち、彼女の興味は一般人では近寄ることすらできない【禁書】へと移っていったのだが、その頃には路銀にすら困窮する有り様であった。 【生きる為には、金が必要。】 …当然、知識として知ってはいたが、 "それ"を、生まれて初めて実感した瞬間だった。 生きる為、 そしてなにより、 【 禁書 /(目的) 】の為に、 自身の才能を活かす職業につく。 それが当面の【 目的 /(手段) 】となった。 しかし残念ながら、この世に彼女の才覚に見合った職種などは存在しない。 単純にスペックが桁違いに高性能過ぎて、 規格が合わないのだ。 乞われて王宮書士や管理官などを務めた事もあったが、自分に合ってる仕事とは到底思えなかった。 館内の書物を読み尽くすわずかな期間だけ完璧に職務を勤めあげた後、一言もなく去っていった。 ・・・・・・ その後、数年の空白期間を経て 彼女は冒険者として帰ってきた。 あらゆる知識と呪文を行使し、 法外な報酬と引き換えに、 依頼を確実に遂行する。 【 冒険者 バジェニ 】となって…。 見た目と性格、言葉遣いは以前とは変わり果ててしまったが、彼女の人生の目的は何一つ変わってはいなかった。 禁書……? それはただの通過点だ。 ただただ、飽くなき【 知食欲 】を満たす為だけに・・・