What Was Lost, What Remains #2
落花流水
6


町は変わりつつあった。 いや、部外者となった私の目には、そう映っただけなのかもしれない。 まず「町」が消えた――正確には、近隣の複数の自治体と合併したのだ。 私はX郡Y町生まれだった。 それが都内の大学へ通う間に、気づいたらX市生まれになっていた。 卒業した小学校と中学校も統廃合され、新しい隣接型校舎にまとめられた。 道路脇に、来週開催される花火大会の交通規制を知らせる立て看板が見えた。 「あの」花火大会もY町主催からX市主催へと変わっていた。 私は……すぐ看板から目を逸らした。 車の窓ガラス越しに、県道に並行して伸びる低い築堤が目に入った。 上面にはすでに雑草が青々と茂っていた。 築堤を走っていたローカル線も、今年の三月末日で廃線となっていた。 だから、あの「汽車」に乗って帰省することはもう叶わなかった。 たった二年余りで次々と変わってゆく故郷の町を目の当たりにして、自分は浦島太郎になったのかと思えた。 「祖母ちゃんが待ってるよ。祖母ちゃん、あんたのこと好きだったからね」 信号待ちの停車中、目線は前方を向いたまま、従姉が話しかけた。 今年は祖母の新盆だった。 懐かしいという感情が、まだ私にはわからなかった。 不意に、祖母のそうめんと天ぷらを思い出した。 決して好きではなかったあの料理も、地上から永久に失われたのだと思うと、急に目頭が熱くなった。 葬儀の時にも出なかった涙が、なぜか一筋流れた。