Elarune
第六章・序幕 ――敏感な心 × 帰る場所 廃墟となり、 忘れ去られたガラスの書屋 その向こうには、 水晶の星海に浮かぶ島々が広がっている。 淡い青色をした、 ガラスのような海。 静かな波が、 月明かりをそっと映していた。 夜空では、 星々が一つ、また一つと、 小さく瞬いている。 無数の星が、 静かに輝いていた 満月は空高く浮かび、 古びた建物も、 庭園も、 優しい光で照らしている。 そこには、 不思議なくらいの静けさがあった 穏やかで、 安心できる場所。 少女が長い時間をかけて、 少しずつ作り上げてきた、 誰にも教えていない秘密基地。 そこは、 小さな神秘の庭園だった 少女は、 静かに空を見上げる その場所で、 一匹の水晶の龍が、 月明かりの中をゆっくりと翔けている。 (……きら……) 透明な身体が、 星の光を受けて淡く輝く 少女は、 そっと古いオルゴールを手に取った。 そして、 ゆっくりと蓋を開く (……カチッ) 静かな夜に、 小さな旋律が流れ始める。 それは、 少女がまだ一度も聴いたことのない音色だった。 少女は何も言わず、 ただ静かに聴いていた。 その旋律を聴いているうちに―― - これまでの人生で経験した悲しみが、 少しずつ胸の奥から蘇ってくる。 消すことのできない傷跡 忘れたかった記憶 そして、 大切だったもの。 「……どうして……」 気づかないうちに、 一滴の涙が頬を伝っていた。 それでも、 今ここに残っているものがある。 大切にしてきた景色 書き留めてきた日記 何度もページをめくった、 古びた絵本。 ここまで歩いてきた、 小さな一歩一歩の足跡 それらは、 決して大きなものではない。 けれど、 確かに少女が生きてきた証だった。 物語が、 すでに終わっているのか それとも、 まだ続いているのか。 少女には分からない ただ一つ、 心の奥に残っている怖さがある。 もし、 この物語がいつか終わってしまったら―― まだ書かれていないページは、 どうなるのだろう。 まだ言葉になっていない想いは、 どこへ行くのだろう。 少女は、 開かれたままの古い絵本を見つめる。 空白のページ そこには、 まだ何も書かれていない。 それでも―― 物語は、 終わったわけではない 少女は、 そっと鉛筆を手に取る。 そして、 白紙のページの前で立ち止まった。 (……いつか) まだ書かれていない、 その先へ 小さな一歩を、 また踏み出すために。

