従姉(あね)の背負うもの
落花流水
8


忘れもしない。この道は今はなき小学校の通学路だった。 入学早々のことだった。私は五月病になる前、すでに登校するのが嫌になっていた。毎日、同じ教室に詰め込まれ、つまらない話を聞かされるのが嫌でしょうがなかった。 両親が手を焼いていた中、毎朝従姉が家にやってきた。それで手を引いて……というよりも、半分引っ張って私を学校へ連れて行った。 一年生の私からすれば、五年生の従姉は大人のように大きく見えた。 その従姉を今はおんぶし、同じ通学路を歩いている。 「ありがとう。毎朝毎朝、遠回りだったのに俺を小学校まで連れてってくれて」 無意識に言葉が漏れた。思えば従姉へ感謝の言葉を述べたことなど今までなかった。 「……どういたしまして。今ね、私も同じこと思い出してた」 私の肩を掴む手がギュッと強くなった。 「やっぱり男の背中ってデカくて厚いんだね。身長はとっくの昔に抜かれてたけど、体つきまで完全に大人になっちゃって」 従姉は何度も私を立派だ、大人になったと褒めてくれた。 ……自分は本当にそんな存在なのだろうか? 「もう私より、あんたの方がよっぽど『おにいちゃん』やってるよー。……今度からおにいちゃんって呼んで良い?」 「なんじゃそりゃ」 私は笑ってしまった。従姉の冗談で笑ったのは、八年前のあの夏以来だった。 何かが私の中で解け始めているのを感じた。