おにいちゃん
落花流水
10


従姉と二人で帰路についた。 小さい頃から何度も通った田んぼ道。それでもこの道に至るまで、私と従姉は長い間、回り道をしていた気もする。 その間に、私たちを取り巻く様々なことが変わっていった。 だが、それらをいちいち挙げることは、もうやめた。今は横にいる従姉と歩くことだけに集中したかった。 何かが頭、頬、腕を叩いた。 夕立だった。 どこか……懐かしい、むせ返る湿気とアスファルトの匂いがした。 激しい雨粒に打たれながら、横を見ると従姉が笑っていた。 「ははは、どうしよっかー。今からコンビニに戻って傘買う?」 「従姉ちゃん、もう間に合わないよ。だから……濡れて行こう」 一度覚悟を決めれば、もう怖いものはなかった。 濡れた私の腕に、別の濡れた腕が絡んできた。従姉が腕を組んできたのだ。 「そういうことは、好きな人にやれば――」 「好きな人とやってるんだよ。好きな人だからやってるんだ」 刈り取りも近い田んぼの間を縫うように伸びる田舎道。 かつて少年だった男と、女神だった女が、雨の中で笑いながら歩いて行った。 (了)