『黒薔薇は黄金宮を歩く』
ドングリ
まばゆい黄金のカジノフロアで、ヨルはゲームテーブルへ身を預け、標的の注意を自分へ引きつけていた。 その表情は穏やかで、立ち姿も優雅。しかし、テーブルへ添えられた指先は、次の行動を伝えるための密かな合図を刻んでいる。 アルトリアはホステスとして自然にその場へ近づき、銀のトレイを掲げながらヨルの合図を読み取る。手元に隠した黄金のカードキーは、すでに回収済み。あとは標的に悟られることなく、VIP区画への道を開くだけだった。 互いに顔を合わせず、会話も交わさない。 それでも二人は、それぞれの役割と次に進むべき道を正確に理解している。華やかな賭場の中央で交わされる、二人だけの無言の連携である。